“荒々しさと緻密さの共存”、これが木象庵の目指す木製家具制作の基本方針です。
素材としての木の凄味(荒々しさ)、良さを活かしつつ、そこに日本古来の伝統技術である組手、仕口の技術(緻密さ、精密さ)を組合せ、それらがより引き立つための手仕事(鉋、鑿等)により仕上げを行います。
そして、自然素材であり持続可能な素材としての木の良さを有効に活用し、世代を超えて長期間使い続けることが可能な家具作りを目指します。
材料は無垢材(集成材や合板とは異なり、天然木から切り出したままの木材)を用います。
銘木と呼ばれる材料ではなく、世間からは敬遠されがちな材料、具体的には割れ・節等を有する材料も扱っていきます。こうした材料は強度上は問題のないものも多く(必要に応じて補強処理(千切り等)は当然行います)、そういう木材だからこその魅力を引き出し、世の中に提供していきたいと考えます。
日本古来の伝統技術である組手、仕口の技術を用いて制作を行います。見えないところこそ、手を抜かず丁寧な家具作りを心掛けます。
また、無垢材を用いることもあり、木の伸縮を考慮した材料、組手の選択は重要になります。先人の知恵を継承しつつ現代の環境に見合った制作を心掛けます。
木象庵は、線の美しさにこだわります。
そのためには日本古来からの道具、鉋・鑿・小刀は欠かせません。手鉋で仕上げた曲面・曲線は、電気サンダー等で加工したものとは美しさがまるで違います。手鉋による仕上げの良さは、表面上の美しさ(滑らかさ、木肌感)だけに留まらず、線の美しさにこそ現れると木象庵では考えます。
天然桐油によるオイルフィニッシュと呼ばれる塗装方法を基本とします。オイルフィニッシュとは木材の表面に塗膜を作らない塗装方法のひとつで、塗装後も木の素材そのものの木肌を保ちます。塗膜を作らない分、他の塗装方法と比較して単純な木材保護性能(耐水性、耐候性、耐熱性等)は劣りますが、使い込むほどに素材本来の美しさが引き出され、短所を補って余りある塗装方法だと考えます。
ただし、滲み等により汚れやすい("味わいがでる" とも言えますが...)ことも事実ですので、ある程度のお手入れと扱い方には注意が必要となります。
天然桐油は、オイルフィニッシュ用塗料として販売されている他の塗料と比較して、仕上りの美しさに優れていると思いますし、人体、環境への負荷も少ないと思われます。欠点は乾燥スピードの遅さです(2週間程度必要)。一般のオイルフィニッシュ用塗料は乾燥促進剤を合成しているため乾燥は早いのですが、環境への負荷は少なからずあると思います(完全自然塗料をうたっている製品もありますので単純には比較できませんが)。
合成樹脂塗料については、そのすべてを否定するつもりはありません。以前に比べると環境への負荷が少ない製品も多くなりました。単純な木材保護性能ではとても優れた塗料だと思います。木象庵では、ポリウレタン樹脂塗料(合成樹脂塗料のひとつ)を使用することもありますが、その場合塗膜量が少ない(合成樹脂塗料の性能を活かしつつ素材本来の美しさを残す)製品、および塗装方法を用います。
工芸品的要素の強い作品、食器等に関しては、ご要望、必要に応じて、生漆による拭き漆仕上げも行います。
最終的にはお客様とご相談のうえ、お客様にとって最適と思われる塗装方法を選択していきます。